「ご帰宅料というシステム」


先週、平日の昼間から秋葉原のメイド喫茶に行ってきました。しかも3軒ハシゴ。イイ歳して何やってんだと思わないでもないけれど、この歳になれば何をやってもイイ歳なので気にしません。

 
実はメイド喫茶は初めてではなく、3年くらい前、その筋の友達に誘われて「アキバ初のメイド喫茶」を見物したことがありました。場所はアニメグッズやコスプレ用品をあつかうビルの売り場の一角。「とりあえず作ってみました」風の簡素な喫茶コーナーなのに行列ができるほどの盛況ぶりで、メイド需要の高さに驚いたものでした。
 
その後、秋葉原のメイド喫茶は伸び続ける需要に応じて着々と増殖し、今では10数店が営業しているようです。メイド関連としては、ほかにもメイドリフレクソロジーやメイド美容室やメイドクラブやメイドアクセサリーショップ…。メイド服着てりゃ何でもありですか、この街は。
 
で今回は、やはりメイド喫茶に興味のある友達とふたりで巡ってみたわけですが、あいかわらず人気ですね、メイド喫茶。ただ、客層は3年前とはだいぶ違っているようです。コアなアキバ系だけでなく、普通のお客さんも意外と多い。女性客もたくさんいます。学校帰りの女子高生の団体もいたりして、このへんは『電車男』とかを観て観光地気分で遊びにきたというかんじでしょうか。工務店の作業服を着た二人連れ。工事の合間にメイド喫茶で一服とは、なかなか優雅な午後のひとときです。
 
そして肝心のメイドたちですが、こちらも3年間で順調に接客ノウハウが蓄積されているようでした。あいさつは店によって若干違いがありましたが、基本的に「帰宅したご主人様をお迎えする」というスタンス。「お帰りなさいませ、ご主人様」もしくは「お帰りなさいませ、お嬢さま」。店を出るときには「いってらっしゃいませ」。ご丁寧なおじぎの角度も実にメイドらしく、背骨がむず痒くなるような慇懃さを身に付けています。
 
もちろん、メイドにかしずかれる以上、それなりの出費は覚悟しなければいけないようです。飲食代のほかに「ご帰宅料」と称するチャージを取る店もあります。面白いですね。ご帰宅料ですよ。お金を払わないとご主人様、自分の家に入れてもらえないんです。そんなお屋敷がどこの世界にありますか? こういう馬鹿っぽさは、たまらなく胸に響きます。
 
ご帰宅料を取られる店では、紅茶を頼みました。メイドがフロアに両膝をついてティーポットから紅茶を注いでくれ、砂糖を入れて丁寧にかき混ぜてくれます。悪い気はしません。
 
テーブルの上には、ホテルのフロントにあるような呼び鈴が置いてあります。せっかくなので、使ってみたいところです。一杯目の紅茶を飲み終わったところで、これをチリンと振ってみました。すると「お呼びでしょうか、ご主人様!」メイドがすっ飛んできて、足元に控えます。「砂糖を」と命じると、すぐに砂糖壺を持って戻ってくる。なかなか従順なメイドっぷりです。
 
目の前には、紅茶のポット。飲みたければ自分で勝手にお代わりすりゃいいんだけど、かりにもご主人様です。ここは試しに、あえて腕組みなどして待ってみます。すると、すかさず気を利かせたメイドが「ご主人様、紅茶をお入れいたしましょうか?」。再びポットの紅茶を注ぎ、砂糖を入れて丁寧にかき混ぜてくれる。「ご苦労であった」と満足するご主人様。よしよし、だんだんメイドのあしらい方が飲み込めてきましたよ私も。
 
 
と、まぁこういう調子で、まんまと相手の術中にはまっていくわけですね。よーくわかりました。
 
 
術中にはまるといえば、こんな光景も見ました。ある店でシーザーサラダを注文した男性客。サラダがテーブルにサーブされると、メイドが上からチーズをかけてくれます。ところがこのチーズが固すぎて、非力なメイドの手ではおろし器のハンドルが回らない。そこでやむを得ずご主人様の助けを借り、ウェディングケーキの入刀よろしく二人一緒にチーズおろしの共同作業です。
ご主人様、心底うれしそうでした。そうでしょうとも。このシチュエーションを「萌え」と呼ばずして何と言おう。その日のうちに2chあたりのしかるべきスレに「シーザーサラダを頼んだ俺は勝ち組!」とか書き込む彼の姿が目に浮かぶようです。
 
しかし「これはどうなんだろう?」とも思います。チーズはその日、たまたま固かっただけなのかと。ひょっとしてチーズおろしの一件は、この店でシーザーサラダを頼むと自動的に発生する隠しイベントなのではないか? そんなふうに邪推してみたくもなるのです。もしそうだとすると、メイドもかわいい服着て、存外したたかではありませんか。まぁ本当のところは、わかりませんが。今度、頼んでみようかなシーザーサラダ。
 
そんなわけで、メイド喫茶はなかなか面白い体験でした。コスプレものにつきまとう痒さと馬鹿らしさも込みで楽しめる人なら、特にメイドが好きでなくても行ってみる価値はあるかもしれません。
 
 
#メイド喫茶に行った帰りに、近所のバーでその話をしたら、店を出るとき店員が「いってらっしゃいませ」と言ってくれました。
 
##数日後、同じバーに入ると、別の店員が「お帰りなさいませ」とお出迎え。よしよし教育が行き届いてるなと思っていたら、「ご帰宅料として500円いただきます」と真顔で言われてしまいました。
どうも余計なことを教え込んでしまったようです。 
 
  
(2005年12月の日記を再掲)

Posted: 月 - 6 月 5, 2006 at 04:45 午後          


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