「スロット・スクエア」パチスロ業界の制服に「萌え」の概念を持ち込んだ画期的なユニフォーム


「アニメキャラのような制服姿の女の子が働くパチスロ店がある」という話を初めて聞いたとき、ついに来たか、と思った。「えっ?」という驚きと「やっぱり来るべきものが来た」という、妙な納得感。意外なような当然のような、不思議な感じがした。

問題のパチスロ店は、大井町にある「スロット・スクエア 」。そこの女性スタッフの制服が、もうどこから見てもアニメ系もしくはゲーム系のデザインなのである。
 
この制服を企画したのは、「スロット・スクエア」の若い男性社員さん。「店をオープンするにあたって、何か面白いことができないかと考えたのがきっかけ」という。そして美少女ゲームの原画などを数多く手がけているイラストレーター針玉ヒロキ氏 が、デザインを提供することになった。なぜ一般のアパレル業者ではなく、畑違いである針玉氏にデザインを依頼したのだろう? そうたずねると「以前から針玉先生の絵が好きだったので」という答えが返ってきた。なんだか、とてもシンプルな理由なのだった。
 
さて、その制服とは、どんなものなのだろうか。同店のホームページに紹介されている針玉氏の原画 を見るかぎり、それは従来のサービスユニフォームの範疇を越えた、非常にユニークなデザインだ。二次元のイラストとしては魅力的な絵だが、生身の女の子が着ることを考えると、少々非現実的にさえ思える。しかし、この制服はすでに採用されていて、現実に女の子が着ているのである。
 
店内で、実際に働いている女性スタッフの姿を見せてもらった。実物の制服 は、原画のイメージを忠実に再現している。しかし、イラストを見たときに心配した不自然さは感じられない。白と黒でまとめた落ち着いた色使いが、ラウンジ風の店内によく似合っており、制服そのものの仕立ても上等。「制服として普通にかわいいデザインになっている」というのが正直な印象である。聞けば、この制服はコスプレ用の衣装で有名な「コスパ」に制作を依頼したとのこと。デザインの良さと仕立ての良さの相互作用によって、二次元から三次元への変換に成功した、珍しいケースと言えるかもしれない。
 
もちろん、魅力的な制服を売りにしたパチスロ店は、これまでにもあった。それらはたいてい、レースクイーン風やバニーガールといった「セクシー系」のデザインだった。しかし「スロット・スクエア」の制服がアピールしているのは、お色気ではない。アニメやゲームのファンが、自分の好きな女性キャラに対する心情を吐露するときによく使う「萌える」という言葉こそが、この制服を表現するのに一番ふさわしい。つまり、パチスロ業界の制服に「萌え」の概念を持ち込んだ点において、この制服は画期的なのである。
 
考えてみれば、本来パチスロというのは「勝ってなんぼ」の、リアルな大人の趣味だ。一方アニメやゲームは、そんな大人の側から見れば浮世離れした子供っぽい趣味であり、ともすれば「オタク」の一言で片付けられがちな世界だ。客層が重ならない、という点で、両者はまさに水と油のような関係だったはずである。
 
しかし「スロット・スクエア」の制服は、その境界面がいよいよ本格的に融解していることを物語っているように思う。アニメやゲームに関する知識を「一般常識」として共有する世代が増えている現在、それはある意味当然のなりゆきなのだろう。「オタク」という言葉が死語になる日も、そう遠くはないのかもしれない。
 
 
 
『Uniform Walker Vol.4』角川書店/ボンマックス 2002年

Posted: 木 - 6 月 8, 2006 at 02:09 午後          


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